デニス・ホッパー『イージー・ライダー』(1969)

監督 Dennis Hopper デニス・ホッパー 製作 Peter Fonda ピーター・フォンダ 製作総指揮 Bert Schneider バート・シュナイダー 脚本 Peter Fonda ピーター・フォンダ Dennis Hopper デニス・ホッパー Terry Southern テリー・サザーン 撮影 Laszlo Kovacs ラズロ・コヴァックス
Easy Rider製作年 : 1969年 キャスト(役名)Peter Fonda ピーター・フォンダ (Captain America) Dennis Hopper デニス・ホッパー (Billy) Jack Nicholson ジャック・ニコルソン (George) Antonio Mendoza アントニア・メンドザ (Jesus)

ヒッピーの行動様式は「知性主義的反知性主義」。以下、その説明。

  • ヒッピーは管理的・権力的な近代社会システムを批判する。近代知批判という「知性主義」。
  • だが行動次元でそれは「反知性主義的振る舞い」として表明される。
  • たとえば、マリファナに親しんだり、アメリカの大自然をバイクで疾走したり…。
  • しかしこの反知性主義は、あくまで知性主義的に選択されたものでしかない。マリファナを吸い、怪し気な世界観を語り出す、アル中弁護士ジャック・ニコルソンの魅力。
  • 知能の高いニコルソンが滅茶苦茶な近代批判を語るとき、デニス・ホッパーはそれを喜んで聞いている。「イカれた知性の発揮」を好むヒッピーは、潜在的にインテリ好き。
  • だがこの「知性主義的反知性主義」は自己解体の危うさを孕んでいる。ヒッピーが知性主義の眼を通して称揚する<アメリカの素朴な原始性>は、所詮、観念的なものでしかない。
  • 彼らのファンタジーは庶民に疎んじられる。ついには彼らは殺される。
  • ヒッピーがコミットしたものは、じつは彼らの思い込みでしかなかった。現実のアメリカ庶民は恐ろしく野蛮で酷薄だった。
  • ヒッピーは<近代のアメリカ>から裏切られると同時に(文明による汚染)、<前近代アメリカ>からも裏切られる(野蛮な殺戮)。彼らの抱いたヒッピー性は幻影としての理想にすぎなかった。
  • 自己矛盾的な病理。これは青春時代の病理であると同時に、60年代末のアメリカの病理でもあったといえる。(誰からも理解されない。この世は腐っている。でも理解されたい。)自己矛盾を内省的に批評した名作。