三枝健起『オリヲン座からの招待状』(2007)

1時間56分 原作: 浅田次郎 監督: 三枝健起 出演: 宮沢りえ加瀬亮、宇崎竜童 田口トモロヲ 樋口可南子 原田芳雄 中原ひとみ 配給: 東映
先代館主の妻だったトメと、映写技師の留吉が守ってきた名画座“オリヲン座”が閉館することになり、最後の上映日にゆかりの人々を招待するが…困難を乗り越える男女の純愛を描く、浅田文学の人間の“情”が光る感動作!!

ギンレイホール。軽率な演出も散見された*1が、魅力ある佳作。
私は原田芳雄が大好きなので、原田の朗読から映画が始まる時点でぐっと引き込まれたのだが、でも、この映画で誰が凄いかといえば、やっぱり宮沢りえである。観た人は、誰だってそう思うだろう。人間的な深みを感じさせる、すごい女優だと思う*2。夫に先立たれて自転車を飛ばすシーンは本当にすばらしかった。
夫の宇崎竜童が死んだ後、ストーリーは停滞する。停滞すると普通駄作になるのだが、それも魅力あるプロットの要素にまとめてしまう凄腕は、浅田次郎のものだろうか?好演だった加瀬亮の真情が、原田芳雄の口から語られるまでのストーリの屈曲が、なかなかの間の持たせ方だった。音楽も良い。http://www.orionza-movie.jp/

*1:田口と樋口がなぜ標準語なのかまったく理解不能だったし、老人になったトメ役がやや問題だったし、『無法松』や『幕末太陽伝』では観客はあんなに笑わない。言葉遣いの間違いもある。昭和30年代の社会変化の書き込みも物足りない。などなど。

*2:京都弁の演技も見事。肉薄していた。