マキノ雅弘『昭和残俠伝 唐獅子仁義』(1969)

(89分・35mm・カラー)シリーズ5作目で、マキノにとっては2作目の「昭和残俠伝」。蔵前一家の元代貸・花田秀次郎(高倉)は、殺された親分の復讐のため、雷門一家に斬り込んだ。刑期を終えて仲間のもとへと戻った秀次郎だったが、蔵前一家の身内である樺島一家がそれを待ち構えていた…。池部良が演じる風間重吉が、ラストで秀次郎と「道行き」をともにする。
'69(東映)(脚)山本英明松本功(撮)坪井誠(美)藤田博(音)菊池俊輔(出) 高倉健池部良待田京介藤純子、夏珠美、宮土尚治、志村喬、山本麟一、小林千枝、御木本伸介、山田彰、河津清三郎、山田甲一

マキノは立派。『死んで貰います』よりも出来が良かった気がする*1。『死んで貰います』は藤純子がおきゃん(御侠)な娘役だったが、藤は本作のように薄倖な美人芸者役の方がグッとくる(『侠骨一代』の母性を感じさせる役も良かったけど)。高倉健に惚れた藤が池辺に惚れ直して「抱いて」って云う場面が素晴らしいし切ない。
あと『死んで貰います』は池辺が料理人役だったので(家の権利書を奪い返した帰りに)親分が殺されたからといって、そこですぐに殴り込みっていうのがあんまり説得的でなかった。高倉健と池辺良が二人で殴り込みにいくパターンを優先させた感がある。もともとマキノは斬り込みシーンを大げさに描いたり、BGMが大仰に掛かったりするのが嫌いだったようだ。そういったマキノの美意識が犠牲にされているように見受けられた。
だが本作品では、藤をめぐる高倉と池辺の恋心がマキノらしく描かれた後で、藤の死をきっかけに二人が怒るストーリーになっている。マキノの美質を十分に味わうことができる。義理と人情が秤にかけられるまえにマキノの得意とする人情がじっくり描かれなければならない。それでも義理が重たい男の世界、なんと詫びよかおふくろに、セナで泣いている唐獅子牡丹、なのである。志村喬も良かった。

さあみんなで唄いましょう*2

*1:今日は見なかったけど4作目『血染の唐獅子』も以前フィルムセンターで見たような気がしてきた。

*2:カラオケで唄う時には「義理と人情を〜」という出だしの低音が地味になりがちなので注意。聴かせるのは意外と難しいよ(経験者は語る)。