奥田瑛二『長い散歩』（2006）

136分 監督・企画・原案：奥田瑛二 脚本：桃山さくら、山室有紀子 出演：緒形拳、杉浦花菜、高岡早紀、松田翔太、原田貴和子、奥田瑛二
定年まで高校の校長を務めた松太郎は、妻をアルコール依存症で亡くし、ひとり娘とも絶縁状態。家庭を顧みなかった過去の自分を後悔しながら、安アパートでひっそりと暮らし始めた松太郎は、隣室の女が幼い娘を虐待していることに気がつく。それ以来、何かと少女を気にかけていたが、ある日ついに惨状を見かね、彼女をアパートから連れ出してしまう。旅に出た二人の間に、少しずつ生まれていく絆。しかし世間は“誘拐”と見なし…。

こちらは傑作。人生の苦味を感じる、非常に繊細な作品。
死に馴染むことで更新される生の感覚。松田翔太が少女たちと公園で遊び回転遊具で得た酩酊感は死の疑似体験である。「お兄ちゃん、死んじゃったね、お弔いしなきゃね」と虐待された少女はお墓を作り、死にかけた金魚を池に放流する。生き物は死ぬのだと確認することで、索漠とした生が辛うじて前進するという救いがたい真実。

ラストはUAの「傘がない」。これ↓。