社会史的背景は深い

『人倫の形而上学の基礎づけ』を読み、「カントの所論の社会史的背景を知らねば」と考えるに至ったので(そもそも『基礎づけ』は『人倫の形而上学 法論・徳論』の原論である)、中世から初期近世にかけてのドイツの社会史を調べてみたら、これが大変興味深い。
とくに、(近代)哲学的には「カントからの反動」とも映るヘーゲル法哲学が、「旧き法」に基づく旧来の支配権が克服された時点での理論であり(教会領の接収と私的所有権の確立がその背景)、それ故に、抽象的人格による抽象的自然権(それは経済社会の成立と軌を一にする)を論理的根拠としていること、その限りでまさに「近代的」な議論というほかないことには、蒙を啓かれた思いがした。
しかし、時間は限られているので、あまり脱線せずに、早急に本来の路線に戻らないといけない。