ジャ・ジャンクー『一瞬の夢』(1997)

(1997年 中国・香港 108分)監督・製作・脚本 ジャ・ジャンクー 撮影 ユー・リクウァイ 出演 ワン・ホンウェイ/ハオ・ホンジャン/ズオ・バイタオ
スリを行って生計を立てている青年・小武(シャオウー)。かつてのスリ仲間だったヨンは青年実業家として成功したが、小武を結婚式に呼ぼうとしない。そのことを知った小武は祝い金を渡そうとヨンの家へ行くが、結婚式に呼ばなかった言い訳をするヨンに対しスリで作った祝い金を投げつけて去る。翌日、カラオケ・バーで働く女性・メイメイと出会う小武。スターになるという夢に破れてカラオケ・バーで歌うメイメイに心を開く小武は、一瞬の夢を見る。……(早稲田松竹HP)

後半が冗長だが、なかなかの秀作。メイメイと出会ってから「いい感じ」になるシーンが素晴らしい。「あれはまさに女が恋に落ちる瞬間だな」とリアルに納得。
でも主題はよくわからない*1。主人公の青年の焦燥感が描かれるので、その意味では青春映画なのだろうが、しかし「彼がどこに向かおうとしているのか」はあまり見えてこない。スリを稼業にしているダメ男であるが、「自分がダメであること」自体は自覚しているようなので、「女と出会って目覚めるか?」とも期待されたのだが…。しかし、「人間的に目覚めた中国人」って、どういうイメージなんだろう?孔子

*1:「1990年代の中国社会の錯綜状況」も、この映画のわかりにくさの原因。青年の出身農村は日本でいうと昭和30年代以前のプレモダン段階。一方、都市的な記号消費を通じた自己顕示性に着目すると、青年の自意識の有り様は80年代〜90年代前半の日本の青年とほぼ等しい(ポスト・モダン段階)。また、都市的な生活スタイルと農村的な生活スタイルのギャップ、そこから生じる自意識の有り様に注目すると、1960年代(モダン段階)の日本社会に典型的な様相が浮かんでくる。