衣笠貞之助『薔薇いくたびか』(1955)

(135分・35mm・白黒)たがいに相手を想いつつも運命のいたずらに翻弄される男女を描いたすれちがいのメロドラマ。長谷川一夫は日本舞踊の家元の役で助演し、スーツ姿で関西弁を披露する。数年後に大映のトップスターに成長する若手俳優たちの生き生きした演技も見物。
'55(大映東京)(監)(脚)衣笠貞之助(出)長谷川一夫(山村御風)(原)小山いと子(脚)相良準(撮)渡辺公夫(美)柴田篤二(音)齋藤一郎(出)根上淳若尾文子、北原義郎、南田洋子菅原謙二京マチ子船越英二市川雷蔵勝新太郎山本富士子、林成年、三益愛子

東京芸術大学のロケを起点に、入試会場(ピアノ専攻)で南田洋子若尾文子に出会う場面から物語がスタートする。芸大の正門は今とほとんど変わらない。入試会場で声楽、弦楽等、いろんな音が入り乱れるのが面白い。
南田洋子カンニングのすえ合格するが、若尾文子は不合格に終わる。南田の兄と若尾は惹かれあうが、結局、互いの受験番号しか(117番、119番)知らないままに別れる。田舎で縁談話が持ち上がり、若尾はいったん「足入れ」するが、南田兄の新聞広告のせいで、3日で里に帰されてしまう。
1年後、南田は結婚、南田兄と若尾もやっとのことで邂逅する。しかし若尾の「純潔問題」が判明し、結婚問題は頓挫してしまう(長谷川一夫も困惑)。若尾のピアノの先生の京マチ子がひと肌脱ぎ、とうとうラストで二人は結ばれる。
冗長で長く感じる部分もあるが、場面に工夫があって、豪華俳優陣の斬新な演技が楽しめる。学生姿の勝新太郎には笑った。若尾文子ファンにとっても必見の作品だろう。前半大活躍の南田洋子がおしゃまな役柄で、とても素晴らしい(唐突に姿を消すのはスケジュールの都合だろう)。上野、鶯谷など、近辺のロケ風景も興味深い。