成瀬巳喜男『銀座化粧』(1951)

(87分・35mm・白黒)大女優・田中絹代を主役にして、銀座のバーで働く女性たちの日常生活が丹念に描かれた佳作。ひとり息子を育てながらバーで働く雪子は、同僚の知人である石川を東京見物に案内した縁で、石川に淡い恋心を抱く。のちの東映監督・石井輝男が助監督についている。
’51(新東宝)(原)井上友一郎(脚)岸松雄(撮)三村明(美)河野鷹思(音)鈴木靜一(出)田中絹代、花井蘭子、堀雄二、香川京子柳永二郎東野英治郎田中春男、小杉義男、三島雅夫、清川玉枝、春山葉子 (新文芸座

一児の母である田中絹代が石川という男と出会い、仄かな恋心を抱く。家に帰った田中は香川と星空を見上げるのだが、このシーンの高揚感が素晴らしい。結局、石川は香川の方と親しい仲になり、「女」から「母」へと、田中は現実に連れ戻される。いなくなった子供を探すために、石川の東京案内を香川に代わってもらったことがそのきっかけ、というのは、成瀬好みの皮肉な演出といえる。銀座界隈は運河が入り組んでいて、路地を駆け回っている小学生の子供は、好奇心に満ちた様子で、街中を探検している。昔の東京は水の都市である。デビュー間もない香川京子が、最高に可愛らしい。