山本薩夫『赤い陣羽織』(1958)

(94分・35mm・カラー)17世中村勘三郎(1909-1988) の初映画出演作で、木下順二の翻案戯曲を映画化したもの。勘三郎扮する代官が水車番の美しい人妻に惚れてしまい、奥方からたしなめられるという時代劇喜劇。コニカラー作品としては、フィルムセンターではこれまでに『緑はるかに』(1955年)の復元を行なっているが、本作品の3色分解ネガは収縮が激しく、復元に至っていなかった。今回、松竹株式会社と協力し、現在使われているカラー・フィルムを用いて当時の色彩を再現することに成功した。比較のため、1958年当時に作成されたポジプリントの断片を本篇の前に参考上映する。(復元作業:IMAGICA)
’58(歌舞伎座映画)(監)山本薩夫(原)木下順二(脚)郄岩肇(撮)前田実(美)久保一雄(音)大木正夫(出)中村勘三郎有馬稲子伊藤雄之助香川京子三島雅夫多々良純小松方正

木下順二による脚本。いかにも左翼風の民話仕立てだが、完成度はきわめて高い。農婦役の有馬稲子がとても美しい。
村祭りの夜、「闇夜祭り」という楽しい夜這いタイムがあり、太鼓の鳴る間だけ、夫婦の交換が合法的に認められる。この時間を狙って、エロ代官(中村勘三郎)が、有馬稲子に夜這いを仕掛ける。ところが、ひょんなことから代官と有馬の夫が入れ替わることになってしまい、悪事を察した代官の妻(香川京子)が、この入れ替えを利用して、代官たちを懲らしめる…。
中村勘三郎の素っ頓狂なおとぼけぶりがとても面白い。左翼的民衆イメージ・権力批判も、これはこれで時代の味があって、楽しめる。