宋があつい

それにしても、宋はアツイなぁ、と電車内読書でつくづく思う。魏晋南北朝時代に仏教や道教が盛んになり、衒示的な文化消費の一環として、礼教ブームが生じた(対抗勢力としての竹林の七賢人)。その後、宋代に入って、空疎な礼式の批判もあって、内面重視の路線が採用される。国教化された朱子学の天理・人欲理論は、アウグスティヌス、ルター、カントの人間の二元性論とも比較できるが、これはある意味で内面の発見とも言いうる時代ではないか?「自由と平等」のヨーロッパ初期近代とは異なり、宋代には科挙官僚制と相まっての「紀律と選抜」の社会原理が定礎され、この点もすこぶる興味深い。
そもそも宋は、(1)王権理論の変質(緯書の権威と五徳終始説の否定、封禅・禅譲の理論的根拠の失効、天理)、(2)経学における四書の重視、(3)科挙官僚制の支配(内面的境地の表現としての文学芸術への傾倒=自己修養する読書人層の出現)、(4)儒教理論に基づく宗族の形成、(5)政治統合における新形態(同心円的に拡がる秩序理論の洗練)などの点でも、画期的な政治体制だった(小島、54-55)。
やっぱり近世?

東アジアの儒教と礼 (世界史リブレット)

東アジアの儒教と礼 (世界史リブレット)