内山節『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』
チョッとした名著だった。日本人の自然観とヨーロッパの自然観の相違、近代実証主義の歴史記述批判。ベルクソンの知性と身体を分割する議論で、気づいたことが一つあった。おすすめ。
日本においては、自然とともに、自然の近くで暮らしていた人々にとっては、たえず自然の姿がみえているからこそ、自然のままに生きることのできない人間の問題もみえていた。しかもなぜ自然のままに生きられないのかは、人間の本性に根ざしている。その本性とは生のなかに「自己」や「我」、「個我」を内在させていることである。生を自己の生としてとらえ、そこから不安が生まれる。そうしてそういう人間のあり方を凡夫の姿としてみていたのがかつての人々であった。そうしてそうであるとするなら、自然は清浄である。なぜなら必要以上に自己を主張することもなく、春になれば花をつけ、秋が深まれば枯れる、ただそれだけの自然の営みを不安をいだくことなく受け入れているからである。(95)
日本の自然観は、ジネンとしての自然、なのである。
日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)
- 作者: 内山節
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/11/16
- メディア: 新書
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