川島雄三『喜劇 とんかつ一代』(1963)
(94分・35mm・カラー)東京・上野を舞台に、高級な洋食店と庶民的なとんかつ屋の確執をエネルギッシュに描いたコメディで、松井八郎作曲の愉快な「とんかつの唄」は主演の森繁自らが歌っている。怪しげなクロレラ研究者三木のり平をはじめ、脇役陣も芸達者ばかりである。
’63(東京映画)(原)八住利雄(脚)柳沢類寿(撮)岡崎宏三(美)小野友滋(音)松井八郎(出)森繁久弥、フランキー堺、加東大介、三木のり平、山茶花究、岡田真澄、団令子、淡島千景、池内淳子、木暮実千代、水谷良重、益田喜頓、立原博、村田正雄、林寿郎
「とんかつを食べられないなら、死んでしまいたい〜♪♪」という冒頭の歌からして、おふざけモードな、賑やかで楽しい作品。カップルの組み合わせが素晴らしい。フランキー堺と団玲子、加東大介と木暮実千代、三木のり平と池内淳子、森繁久弥と淡島千景。このうち池内淳子(怪しさ満点のクロレラ研究家の妻)だけキャラがすこし薄いのだが、おカタイ印象がかえってちぐはぐ感を出している面もあって悪くない。箸とお手拭きとトイレを研究するフランス人役、岡田真澄も良かった。
東京オリンピック間近の上野近辺も興味深い。実在のとんかつ屋、精養軒になぞらえた青龍軒、上野動物園、不忍池。「とんかつの油の滲むような接吻をしようよ〜♪♪」。フィルムセンター小ホール。