社会史の視点

二宮宏之『マルク・ブロックを読む』(岩波書店、2005)はとても面白かった。『王の奇跡』*1『フランス農村史の基本性格』『封建社会』の内容も分かる、超お得な一冊。集合表象論にコミットしているボクとしては、アナール学派の知的出自も詳しく確認できて良かった。ブロックとフェーブルが役割分担していったのでは?という話も面白い。
ちなみに『世界の歴史10 西ヨーロッパ世界の形成』(中公文庫)の佐藤彰一先生執筆部分を読んでいたのだが、こちらも心性史を重視した記述でとても面白い。ローマとの関連で描かれた、ゲルマン民族の移動の記述が非常に分かりやすい(マルコマンニ戦争の背景、ゲルマン人の法典編纂の理由)。軍事力の意義の変化にともなうメロビング王朝とカロリング王朝の性格の相違、とくにカロリング王朝で王権の神聖化が初めてなされた(塗油の儀式)という話には(64〜65)、アナール的な歴史記述との関連で、ふーんと思った。
初期修道士の禁欲活動としてエジプトに注目されているのも興味深いのだが、告解?がアイルランド修道院によってもたらされた、というのは初耳(じゃないかもしれないが…)。有史以来、家族は単婚小家族、というのもコロンブスの卵。

*1:センター試験のリード文をパラパラやっていて、こんなのを見つけた。「16世紀末期、アンリ3世統治下のフランスはユグノー戦争という宗教戦争のため混乱状態にあった。外国勢力の介入によって国家統一も脅かされていた。アンリ3世の暗殺でヴァロア朝が絶えると、1589年ブルボン家のアンリがアンリ4世としてブルボン家を興した。新教徒のアンリ4世は旧教に改宗することでこの宗教的対立の解決を図った。また、アンリ4世は「瘰癧病」という腺病の患者へ触手儀礼を行い、その情景を描いた版画を流布させ、新国王の神秘的な治療能力や、王位継承の正統性を民衆に誇示した(下図参照)。さらに1589年のナントの勅令で新教徒にも大幅な信教の自由を与えるなどして、ブルボン朝の基礎を築いた。」(2004年)。「瘰癧病」に下線が付され、ヨーロッパの病に関する問いが設けられているのだが、ただ書きたかっただけのような気が…。