イェジー・カワレロウィッチ『尼僧ヨアンナ』(1961)

MATKA JOANNA OD ANIOŁÓW (108分・35mm・白黒)1962年4月日本公開(ATG共同配給)。かしこ夫人の熱心な奨励と東宝の出資により、世界のアート・シネマ普及を強化させるべく、全国の中小映画館10館の連合組織である日本アート・シアター・ギルド(ATG)が発足した。本作はATG第1作である。中世の尼僧修道院で、美しい院長ヨアンナの悪魔払いに身を捧げる修道士の愛が鮮烈に描かれている。
’61(ポーランド)(監)(脚)イェジー・カワレロウィッチ(原)ヤロスワフ・イワシュキェヴィッチ(脚)タデウシュ・コンウィッキー(撮)イェジー・ヴーイチック(美)ロマン・マン(音)アダム・ワラチニュスキー(出)ルチーナ・ウィンニツカ、ミェチスワフ・ウォイト、アンナ・チェピェレフスカ、マリア・フワリブック、カジミエシ・ファビシャック

東欧映画はやはりワケが分からない。タルコフスキーなんかと同じで、文化ギャップが理解を阻むところがある*1
白と黒のコントラストで構成される映像は、とても奇妙で不気味な印象を残す。ヨアンナに悪魔が憑依し、ガラガラ声で呪詛の言葉を投げつけるシーンも恐ろしい(ブリッジしてカッと目を見開く)。鏡をカタンカタンやりながら、悪魔が乗り移った神父が自問する映像も、その後の行動を考えるととても不吉なものだ。
しかしやはり神学が絡んできわめて難解な映画である。ユダヤ人ラビが出現して「神が世界を創ったとするなら悪魔とは何か?世界は悪魔によって創られたものではないか?」と神父と議論を交わすシーンがあるのだが、悪魔とともに自滅的行動に及んだ神父の行動の意味を考えると、「結局何だったんだろう?」とポカンとしてしまうところがある。ポーランドの日本浪漫派みたいなものか?(冗談)

*1:双葉センセイは次のように評価している。「ぼくは映画でも芝居でも予備知識なしに観るのを建前にしているが、この作品もいきなり一見してたいへんなショックを受けた。十七世紀ポーランドの尼僧院、悪魔に憑かれた院長ヨアンナと対決する神父は、自らを犠牲にして尼僧院を救う。ここにはカソリシズムやナチス・ドイツスターリンソ連などの圧迫に対する痛烈な批判が秘められている。どこの国の映画にも見られない映像感覚で、荒廃と神秘ムードを描き、鬼気せまるものがある。(200)」