デヴィッド・クローネンバーグ『イースタン・プロミス』(2007)

EASTERN PROMISE イギリス・カナダ合作映画 英語・ロシア語 1時間40分 出演 ヴィゴ・モーテンセンナオミ・ワッツヴァンサン・カッセル
看護師のアンナは、出産して死亡したロシア人少女の身元を、遺品の日記を手がかりに探し始めるが…。ロンドンの裏社会に踏み込んでしまった女性と、ロシアンマフィアの掟の中で生きる謎の男との出会いをスリリングに描いた、クローネンバーグ・ワールド!!

特殊な美学が反映された残酷(変態)マフィア映画。冬のロンドンを舞台に、暗躍するロシア・マフィア、人身売買の東欧系売春婦などが描かれる。ドス黒い血しぶきの噴出する、灰色と黒色の世界。ロシアのローカリティーが妖しい魅力を放つ。
首を切りつける殺害シーンも凄いが、主人公が売春婦とセックスするシーンがやたらと病的である。それをじっと見つめるボスの息子(キリル)も深刻なコンプレックスを背後に抱えているだけに完全に変態的だった。死体を遺棄する河岸で赤ちゃんを受け渡しするシーン、チンチンを振りまわしながらヴィゴ・モーテンセンがサウナで格闘するシーンがスリル満点。
素人娘の助産婦アンナがあまりに軽率にプロ集団に近づいていくので、これは脚本上の欠点だと思う(ロシア系は直情的な人々として描かれているが)。ラストはやたらに思わせぶりな終結で、個人的には気に入らないが、美学の人の映画であり、この作品に限ってはアリかもしれない。