是枝裕和『歩いても歩いても』(2007)

1時間54分 出演 阿部寛夏川結衣原田芳雄樹木希林、YOU
兄の命日に、妻子を連れ実家を訪れた良多は失業中の身であり、父とはそりがあわず気の重い帰郷だが、ふとした事で両親の老いを感じ……平凡な家族の悲喜こもごもの一日を描いた秀作ホームドラマ!http://www.aruitemo.com/index.html

海の見える小高い丘の住宅地(場所は神奈川)。元医者の原田芳雄樹木希林夫妻、その家族たちの一日。美術修復士の阿部寛は、元夫と死別した“子連れやもめ”夏川結衣を妻に迎え、海の事故で亡くなった兄の命日に実家を訪れる。
冒頭、料理を進める手つきが克明に画面に映し出される。日常の積み重ねとして営まれる家族。そうしたなか、厳格な家族規範を内面化した原田、老いて偏見を晒す樹木の言葉が、息子夫婦の心理に重くのしかかる。身近なだけに、疎ましい感情からも逃れられないのも、家族というものだ。
成瀬巳喜男のテーマを小津風に描いた映画といえるが、心理描写がわざとらしいのが欠点。上流階層の規範意識がベースなので、家族間の心理的軋轢もフツウより粘着質である。実家の表象も一昔前のもののような気がする。ボロい風呂場は良かったが、平成20年だとこんな家はなくなっているんじゃないか?(ついでに言えば、原田みたいな頑固親父も絶滅しているはずだ。)
ストーリー展開の単調さを考えれば、それなりに楽しめる作品。夏川結衣は私のタイプ。