ケネス・クラーク『ザ・ヌード』(ちくま学芸文庫)。ブックオフで105円で見つけたので電車の中で読んでいたのだが、個々の作品批評が具体的でわかりやすく、真面目に読んだら絶対に面白い本だと思う。著者は「すべてはエロだ」というO君と同じ意見の持ち主のようだ。

ルーベンスとかルノワールの裸体像が触発するさまざまの記憶と感覚の混合には「官能的なものと結びつく」多くのものがある・・・。・・・むしろいかなる裸体像も、たとえ抽象的なものであれ、観賞者にほんの幽かな影なりとも抜かりなくエロティックな感情を掻き立てるべきであって、もしそうしなければ、それは悪しき芸術であり誤れる道徳である・・・(26)

清水義範『幸せになる力』(ちくまプリマー新書)はなかなか良い読み物だったが(子ども向け)、最終章の主張は「親をすてなきゃいけない」。これは親に向けられた主張でもある。価値観が多元化したぶん、家族内価値観が絶対化しかねない面があるので、これは案外重要な指摘なのかもしれない。