濱口竜介『passion』(2008)

115分 出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子岡部尚、渋川清彦 解説: 結婚間近の果歩と智也を祝う席上、智也の過去の浮気が発覚し……。男女5人が揺れ動く一夜を描いた群像劇。サンセバスチャン映画祭で上映された。河井青葉、占部房子が複雑な女性像を好演。東京藝術大学大学院修了作品。

アラサー世代のイケメン男女による、グズグズ恋愛物語。タコ足的に延びた、不適切な関係。それぞれに訳の分からない人生論を語り、正当化を試みるが、口論も交えて交遊しているうちに、当人達も混乱の極みに陥っていく(という、その「状況」が描かれる)。
skmt君との品評会で悪口は全て吐き出したが、監督の人生経験と人間観察力に決定的に問題を感じる。上映後の監督インタビューによれば、『passion』という題名はactionならぬ、passiveという語を意識して付けられたものだというが、passiveな局面に安易に身をゆだねる以前に、もっと熟慮し、意志することが必要ではないか。
29才という年齢設定で、恋愛にしか関心がないようなピュアな主人公たちを登場させることの問題は大きい。幼稚な人間が幼稚な人生論を長々と語るシーンにも辟易したが、ふつう問題状況にぶつかったら、主人公たちのように(幼稚な人生論が無効になった末に)passiveになるのではなく、意志と決断によって、状況との格闘に向かうはずだ。意志と決断をactiveに発揮することによって、後悔と断念を抱え込み、そうしてピュアさに安住出来なくなるというのが、フツウの大人というものだろう。
http://www.filmex.net/2008/sakuhin/fc10.htm