フランク・ボゼージ『歴史は夜作られる』(1937)

主演:シャルル・ボワイエジーン・アーサー、レオ・キャリロ、コリン・クライブ、イヴァン・レベデフ
アメリカの船舶王である夫の異常な嫉妬から逃れてパリに住むアイリーンは、窮地を救ってくれたホテルの給仕長・ポールを愛するようになる。しかしこれを知った夫は、殺しの罪をポールにかぶせ、彼を救うためにアイリーンは夫の言いなりに帰国することに。後を追ってきたポールと共にパリに戻ることを決めたアイリーンだったが、怒り狂った夫は二人の乗った客船に危険な航行をするよう命じ…。

「妻(アーサー)の起こした離婚訴訟が認められてしまった海運界の大立者が、妻に不貞を働かせようと画策する。彼女の危機を救ったのがホテル給仕長のボワイエ。感激したアーサーは彼と、ハイヒールをぬぎすててタンゴを踊る。甘いタッチの名場面だ。あれこれあった末、二人は豪華客船(元の夫の持ち船)でパリに戻るが、船は氷山に衝突、元の夫は自殺する。タイタニックをモデルにしたこのクライマックスは大スケール、大スペクタクル、氷山に激突の瞬間など手に汗握る見せ場になっている。いいテンポの展開で、こちらもいい気分。」(『外国映画 ぼくの500本』)
ボワイエがジーン・アーサーを救う際、元夫の画策にはまらないよう、強盗に扮するという機転がオシャレだった。車の中で真相を明かし、タンゴを踊るまでの流れも甘い雰囲気。船中、タンゴを踊ったりロマンティックな時間が流れる背後で、危険航行をする汽船の音がボーッ、ボーッと鳴っている演出がとても良かった。濃霧の使い方も上手い。上の引用で「あれこれあった末」とある間、疲れが出て、寝入ってしまった。