亀井文夫『女ひとり大地を行く』(1953)

(146分・35mm・白黒)キヌタプロと炭労北海道支部の共同製作よる労働組合製作映画。北海道の炭坑で姿を消した夫の後を追い、自ら炭鉱夫として働くことになった女性の20年間の生活を描く。『母なれば女なれば』に続き起用された山田五十鈴が闘う婦人労働者を演じている。亀井は本作を最後に、再び記録映画の世界に戻ることになる。
'53(キヌタプロダクション=日本炭鉱労働組合北海道地方本部)(監)亀井文夫(脚)新藤兼人、千明茂雄(撮)仲沢半次郎(美)江口準次(編)長沢嘉樹(録)安恵重遠(音)飯田信夫(出)山田五十鈴岸旗江、沼崎勲、宇野重吉織本順吉内藤武敏

白黒映画じゃなくて、もはや赤白黒映画というか、強烈な左翼映画だった。東北の農村不況から始まって、農民や炭坑夫がいかに搾取されてきたか、どのようにして権利を拡大していったか、戦時体制と結託する国家独占資本にどのように対峙し戦略を組み立てていくべきか、すべてが学習できるように作られている。炭坑内の、ディズニーシーの「センター・オブ・ジ・アース」みたいな乗り物の前で、丹波哲郎がアジって24時間ストに突入する。働く者のための世の中にせにゃいかん。
記録映画風の妙なリアリズムが面白く、それなりに物語性に紆余曲折があるので(山田五十鈴宇野重吉に再会する)、見ていて普通に楽しめる。教条的な図式とともに、民衆のリアリティーもけっこう鋭く表現されているので、珍妙な時代を振り返る意味でも、見応えは十分だった。山田五十鈴の魅力も大きいが、ハッとするような時代のリアリティーが所々に写し取られていて悪くない。