森崎東『喜劇・女は男のふるさとョ』(1971)

主演:森繁久弥中村メイコ倍賞美津子緑魔子河原崎長一郎伴淳三郎
ストリップ斡旋所・「新宿芸能社」を営む金沢夫婦は、踊り子たちに父さん母さんと呼ばれ慕われている。ある日、旅回りに出ていた踊り子・笠子が戻ってくるが、やくざに捕まって暴力バーに監禁される。父さんは彼女を救出に向かうも失敗、続いて母さんが糞尿片手に殴り込み笠子を無事救い出す。笠子が再び旅に出た後、間は抜けているが気立ての優しい星子という娘が、新たな踊り子として加わるのだが…。藤原審爾の「わが国おんな三割安」を映画化した「喜劇・女シリーズ」第一作。(CV)

女の子のお尻、太もも、胸をさわりまくる森繁久弥。普通の顔が泣き顔のような薄倖の娘・星子。星子をかばって、涙を流しながら啖呵を切る中村メイコ。貧乏人の悲しさとプライドと人情が描かれて、感動的な映画だった。ハンカチに痰を吐き出すケチ老人の伴淳もよかったが、伴淳と結婚する星子が圧倒的に素晴らしい。何をやっても不器用な星子のヌードショーは、何ともいえず不格好なのだが、見ているとじんわりくる。
主役の倍賞美津子も美しくて、素晴らしい。前向きで外向的に振る舞っているのだが、どこかで人を信じられない物哀しさを隠している。鹿児島でヌード公演を終えて、男の情の深さにうたれるシーンがとても良かった。ワゴン車のなかに取り付けられたテレビからは、放送終了の「君が代」が流れて、感情が一気に迸りでるような高揚感が襲ってくる。外は大雨。
「女・寅さん」といった作風であるが、神代辰巳『赤線玉の井 ぬけられます』の雰囲気を思い出した。感情的な高揚が素晴らしい作品。