森崎東『ニワトリはハダシだ』(2003)

主演:浜上竜也、原田芳雄倍賞美津子肘井美佳加瀬亮石橋蓮司余貴美子、守山玲愛、李麗仙、塩見三省岸辺一徳柄本明中川梨絵
潜水夫のチチ・守と二人暮らしをする15才の少年・サムには、別居している在日朝鮮人のハハ・チンジャと妹の千春がいる。彼は重度の知的障害を持ちながらも、人並みはずれた記憶力を持っている。しかし、その記憶力が災いして警察の汚職事件に巻き込まれてしまい…。家族、そして養護学校の教員までが、サムを助けるべく奮闘する。森崎監督独特のユーモアと人間の絆に対する新年が、現代に潜む問題をダイナミックにあぶりだす。(CV)

在日韓国人知的障害者の世界がユーモアたっぷりに丁寧に描写される一方、荒唐無稽でダイナミックなサスペンスが展開される。京都の舞鶴という土地が独特の雰囲気を生み出していた。潜水夫の仕事も良いし、倍賞美津子とサム・千春らの在日韓国人の生活風俗も味わい深い。
暴力団と警察が破壊を繰り返すシーンの倍賞美津子、同じシーンでベンツを海に捨てる原田芳雄が、それぞれ素晴らしい。老け役の石橋蓮司が格好良かったのと、若い警察役の加瀬亮の演技がさわやかだった。ベースとなっている左翼的世界観も、このくらい地に足が着いていると、好感をもてる。権力が都合の悪い問題を握りつぶすために、知的障害者を冤罪に陥れるということは、無い話ではない。