ウィリアム・ワイラー『ベン・ハー』(1959)
222分、原作 ルー・ウォーレス、音楽 ミクロス・ローザ、脚本 カール・タンバーグ、出演 チャールトン・ヘストン(ジュダ=ベン・ハー)、ジャック・ホーキンス(クインタス・アリウス)、ヒュー・グリフィス(族長イルデリム)、スティーヴン・ボイド(メッサラ)、ハイヤ・ハラリート(エスター)
ユダヤの豪族の息子、ベン・ハーの数奇な運命を通してローマの圧政とキリストの最期を6年半の製作期間と54億円の巨費で描いた一大スペクタクル。些細な出来事から旧友メッサラの裏切りにあい、奴隷船送りとなったベン・ハーはそこで命を救ったローマの将軍の養子となる。束の間の安住の後再び故郷へ戻った彼は、別れた家族が獄中死したと聞かされ戦車競技に出場する事を決意する。そこではメッサラとの宿命の対決が待っていた。(yahoo映画)
ガレー船での海上戦、戦車競争などの名場面は、テンションが異様に高まってどうしようもないほど素晴らしい。しかし、キリストの磔刑の場面に至ってみると、「ああ、これはやはり宗教劇なのだ」と深く感得することになる。ベン・ハーはきわめて卓越した人間であるが、それでもメッサラへの憎悪にとらわれて、神性から遠ざかってしまう。そんなベン・ハーの苦難を通して、「神とは何か」「愛とは何か」という問いが生々しいかたちで浮上するのである。
海上船の対戦相手がマケドニアだったり、キリストの磔刑で群衆がイエスに同情的だったりするなど、細かい所で妙なフィクションだなという感じは受ける。でもキリストが絶命するシーンでとんでもない重低音が響き渡ると、そんなことはどうでもよいと思えてきてしまう。血の流れたゴルゴタの丘の水溜まりに、十字架に掛けられたキリストの姿が一瞬映ると、「ああ、これが神か、hallelujah」と、真言宗のわたしですら感動してしまうのである。
信じられない大傑作であることに間違いはない。全米が痙攣。ここまで来ると人類の至宝ですね。(ただし映画館で見ないといけない。)