サヴァリッシュ

N響アワーで、今年度のベストコンサートという観客ランキングを発表していたのだが、サヴァリッシュが、第1位、第2位を独占するという結果であった。第2位は、サントリーホールでのブラームス交響曲第一番。第1位は、NHKホールでのベートーベン交響曲第七番。で、じつはわたし、この1位の公演を会場まで見に行っていたのである。前半は、ブリテンのバイオリン協奏曲だった。
たしかに、あらためて放映された演奏を聞いていると、迫力があって、立派である。また公演終了後の拍手の鳴り止まないことといったら、観客は、サヴァリッシュが私服に着替え終わるまで、ずっと拍手をしていたくらいである。私も、それなりに満足したことをおぼえている。
しかし、これがベートーベンでなかったらなぁ、と思ったのも偽らざる事実。第七番、しつこすぎて、今の私にはちょっとあわない。いや、しつこくてもいいのだが、ベートーベンの思いつめたような直情ぶりに、どうしても引いてしまうのである。勝手に上り詰めてください、という感じか。CDでは、イッセルシュテットカルロス・クライバーベームなんかを聴くが、息苦しくなって、途中で聴くのを止めてしまうことも多い。第2楽章とかは好きだが、それでも一楽章分で十分なほどの密度。この感覚は、実際の会場でも変わることはなかった。少し注意深く聴いたら、それだけで疲れてしまう。
私はクラシック音楽が好きな方だと思うけれど、正直、ベートーベンの交響曲は苦手である。曲の各部分すべてが結論、といったような完結性が、あまりに過剰なのだろう。同じ過剰でも、最近、マーラーなどは愛聴しているのだが、両者の質的差異はいったい何なのだろうか。もちろん、良い演奏者に巡り合っていない可能性もあるけれど、クライバーでもダメだったし、なんせサヴァリッシュが1位ということで、これは体質的な問題といえそうだ。