フランク「交響曲ニ短調」

アルトゥス社から出たクーベリック指揮・バイエルン放送交響楽団のライブ録音(1965)を聴く。内容は、モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」、ヒンデミットウェーバーの主題による交響的変容」、フランク「交響曲」、ワーグナー歌劇「ローエングリン第3幕前奏曲」。
文句なしに、素晴らしい。「ハフナー」はこれまでワルター・コロンビア交響楽団を愛聴していたが、こちらのほうがスマートで清冽。ワルターが音の豊かな拡がりにおいて優れているなら、クーベーリックは、端正さを備えた速度感において、圧倒的に快い。
なかでも始めて聴いたフランク(1822−1890)の交響曲(1888)は、ガーシュインラプソディー・イン・ブルーを思わせるようなメロディーの親しみやすさと同時に、とぐろを巻くような暗い情念の底流も仄見られて、結末へと向かって突き進むその高揚感が、まったく作り物とは思われない。「循環形式」というのも効果をあげているのだろうか。陶酔できる。
ワーグナーを聞いていても思うが、ここでのクーベリックというか、バイエルン放送交響楽団の演奏は、たがいの音を注意深く聞きとりあっていて、構成感がじつに精妙。しかも、各ソロパートの歌心も絶妙で、金管の大げさな咆哮がないのもうれしい。グッドである。