松崎天民のパクリ

銀座 (ちくま学芸文庫)
「seiwaが、ブログを書いているそうな。題して『和みワールド』だつて……」
「相変らずダサいな。『何とか日記』とか、『何とかダイアリー』とか、シャレた題名が有りさうなものだに……。『和みワールド』とは余りに平々凡々ぢやないか?」
「その無味平凡な所に、ブラブラノラクラの風味があるんだろう。和むような、世に挑むような、妙に斯う支離滅裂な、そこが彼奴の取柄かも知れないよ……」
「そこで詠嘆と、主観と、一流の抽象的な筆法で、ルウナティックを強調したのでは、何時ものseiwa式で感心しないのだが……」
「今度は客観的に、読書した内容を、議論して貰いたいものだ。朝から晩まで、碌なことを考えないで居て、何か知ら意義あることにでも、タツチして貰はなくては、第一、面白くないからね……」
「そいつは大変だよ。時間はかかるし、本読みも必要だし、それに鋭い神経と感受性と、ジャーナリストめいた構成力と、論理力と……seiwaも並大抵のことでは、カリスマ・ブロガーになることは出来まいと思ふね」
「第一、彼奴は学徒を以って任じて居るが、一面に於いては感傷的な詩人でね。彼奴がいろいろの実感を突込んで表現する所に、一流の持味があるんだよ」
「そいつが今度は、客観的に書評を書くとなれば、所詮失敗に終るかも知れないのさ。彼奴の文章から、強い主観をマイナスしたら、残るものはどこにでもあるガラクタ知識ばかりといふことになる」
「だが感傷ばかりに耽るというのも、困りものだろう。そういうブログなら、もう腐る程だ」
「何れにしても、独特の観察眼を発揮して、広く関心を起こそうと云ふのだろう。大いに期待して、読んでみることだよ」
「といつても、読んでいるのはたつたの二人というじやないか。まずは宣伝からだ」