変態性について

札幌で24歳の保護観察処分中の男性が、女性を監禁していた事件だが、このメディア注目度の高さはいったい何なのだろう。法務大臣もしゃしゃり出たりしてるが、やはり犯人の顔があまりに美形だから、注目されてるのだろうか。美形なのにヘンタイ、というニュースバリュー。
いずれにしても、世の中のヘンタイ蔑視はあまりにもひどいということが、今回の報道をめぐっても明らかになった。いま「報道ステーション」で、むかし交際をせまられたという女性が現われ、「犯人はときめきメモリアルが好きだった」と証言している。しかし、私が高校のときには、「ときメモ」にトキめいている友人なんて、いっぱいいたぞ。オタクとSMと犯罪者と、きちんとカテゴリーを区別してやらないと、多くの無害なオタクにたいしてあまりにひどすぎるのではないだろうか。
もちろん、サディズムロリコンなどへの嗜好性が、自己尊厳の低さと関連している可能性自体は捨てきれない。言いかえれば、相手を対等の人格として認めるだけのキャパシティがない人間が、弱いものへの支配欲を満たすことで、みずからの万能感を維持するという構図が、SMやロリコンには存在しうることは考えやすい。じっさい今回の犯人も、お金持ちの家に生まれて、わがままに育てられた結果、学校生活では人間関係がうまくいかなかったということだそうだ。そういう意味で、そこに犯罪につながる傾向性を見出すことには、一定の妥当性が認められるのかもしれない。
とはいえ、相手を対等な人格として認めたうえでのSMなどもありうるわけだし、ある種の変態性というのは文化でもあるのだから、一概に非難だけするという態度は、やはり慎重であらねばならないだろう。
さらに文化などという面倒なことを言わなくても、世の中、そうキャパシティの広い人間ばかりでもないわけだから、ちょっとくらいSMとか、少女を陵辱する妄想を楽しむ人がいたとしても、許してあげるべきなんじゃないかと、寛大な私は思ったりもする。そういえば、夢精でパンツが汚れるのが嫌なあまり、少女に萌えるようになった倫理学者も存在しているわけだし。
ともかく、犯人の家からはこんなにたくさんのビデオが、などというステレオタイプなニュースにはうんざりである。世の中的なヘンタイのイメージに乗っかって、事件を理解しようというのではなく、個別の事例、個別のヘンタイ性に反応していったほうが、ニュースとしても興味深い内容になると思うんだけどさ。文化だから、変態は。