『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』

ギンレイで『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』(2003、仏、フランソワ・デュペイロン監督)という映画を見た。舞台はパリ。家族の愛情に恵まれない16歳の少年と、雑貨屋をやっているトルコ商人の老人との心温まる交流。古典的テーマだが、けっこう良い映画だったと思う。終わり間際、二人がトルコへと旅する間に映し出される、情緒豊かなイスラムの光景が素晴らしい。また、老人がコーランを引用しつつ、賢げな警句を繰り出すのも意外とオツなものだ。「すべての川は、同じ海へと注がれる」、「合わなくなった靴は変えればいい。靴は変えられるが、二本の足は取り替えがきかない」、すこし「人間だもの」風なにおいがしないでもないけど、油断しているとすぐに癒されてしまう。まあ油断するのも悪くないだろう*1

*1:こういうのもあった。少年に向かって老人が言う。「臭いか?」「足が臭くならないうちは一人前ではないのだ。」斬新な考え方であるが、老人が人生のなかで到達した美意識が、簡潔に表現されているように感じた。