『教科書採択の真相』

藤岡信勝『教科書採択の真相』を読む。

 日本は戦後一貫して自由主義陣営に属し、高度に発達した経済をもつ国である。ところが、その国で使われている教科書は、マルクスレーニン主義の思想にもとづいて書かれている。その教科書は文部省の検定を堂々とパスし、全国の子どもたちがその種の教科書によって思想形成をとげる。こうした実態は、一度それとして気がつくと、いかにも奇妙奇天烈な、説明のつきにくいことである。なぜ、こういうことが可能になったのか。その全面的な解明は、文明論的な視点を含んだ将来の研究に待ちたいと思う。しかし、さしあたり確かにいえることは、こうした日本的な特殊な事態の起源がアメリカの日本占領政策のなかにあり、また、その後の東西冷戦と深く関わっているということである。(50) 

前半部分はギョっとするが、議論をたどっていくとまあ分からないでもない。この本、基本的に良書だと思う(皮肉ではなしに、勉強になる)。
ただ藤岡氏らの活動の意義は、「思想的に正しい教科書づくり」というよりは、「教科書採択制度の正しい運用」の方にあったのではないかと思ったりもする。