ドレスデン国立美術館展

ドレスデン国立美術館の全貌を明らかにするという趣旨の企画展を、西洋美術館に見に行った。この美術館は、ザクセン選帝候アウグストの「美術収集室」(1560年)に由来するものらしい。とにかく珍妙な品物がたくさんあり、「集光鏡」とか「地球儀」とか、あやしい科学機器が目白押しだったのにはビックリした。だが、そんな王様の物好きには構っていられないこともあり、それらのコーナーは基本的にスルー気味に通ることに。ほかにも「オスマン帝国の武具」「イタリア風絵画」「東アジアの陶磁器とその模倣品(マイセン)」「アウグスト強王(1694−1733)のフランス趣味コレクション」といったコーナーが充実していたが、薄い関心のもとに流し見する程度で、メインはあくまで「オランダ絵画」と「ロマン主義絵画」のコーナー。ようするに、フェルメール「窓辺で手紙を読む若い女」(1659年頃)とレンブラント「ガニュメデスの誘拐」(1635)、あとはフリードリッヒの「月を眺める2人の男」(1819)・「雪中の石塚」(1807)である。なんだよ、名画ばっかり見やがって、このミーハーめ、という声が聞こえてきそうだけれど、名画には名画とされているだけの理由があるのだから、これはこれで良いのである。というか、わけのわからん「振り子照準四分儀」なんて機械とかを、律儀にも穴の開くほどみる暇はないのだよ。実際、フェルメールレンブラントも他を冠絶して見所満載だったし。見聞を広めることも重要だが、「鑑賞」ということの意味も十分に考えなくてはならない。あと、ルイ・ド・シルヴェストル「馬に乗るアウグスト強王」(1718年頃)の絵だが、あれ、作品にぽっかり穴が空いておりました。どうも空いたばっかりの穴のような気がして仕方がないのだが、大丈夫なのだろうか。なお、ほかに気になった作品を挙げておくと、ベルナルド・べロットとかいう18世紀中頃の人が描いたエルベ河周辺のドレスデン都市の絵、あるいはフリードリッヒの友人とかが書いていたロマン主義絵画など(ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールの「満月のドレスデン」も良かった)。マイセンとかの陶磁器とかも意外に良かったかな。