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昼にゼミを終えて、事務的な事柄を2件片付けて、いよいよ身体がだるくなってきたので、カテキョウまで喫茶店で安静にすることにして、とりあえず読み始めた本が、山ノ内靖『日本の社会科学とWeber体験』(筑摩書房3800円→105円)。
彼の総力戦体制論は、大塚や丸山や大河内といった市民派社会科学者の戦時中における学問的営為のなかから着想されたものだったわけだ。Weberを近代化論の文脈で読むことには無理があり、むしろニーチェの線を強調すべきだという彼の主張は、それを市民派的に読み解いた大塚の内在的批判へと向かう。丸山も学部生時代の論文が引っ張られたりして同じ文脈で理解されるのだが、それにはちょっと無理を感じるものの(徂徠学への着目はやはり戦時体制批判という「意図」があったわけだから)、大河内の場合であれば、その社会政策論をめぐって、そういった指摘があてはまりそうだ。
というわけで、なかなか話題豊富な読みやすい本なのだが、MarxやWeberの物象化論を批判して、疎外論を評価しているところが面白い。システム化に抗うという意味でのニーチェ的価値の称揚、といった戦略をとる以上、その帰結は必然的なものといえるのだろうが、そんなにシステムに抗わなきゃいけないの?、そんなにシステム化と実存の問題は折り合いがつかないの?などと思ってしまう私は、「総力戦?だからどうなの?」という疑問とも相まって、彼の問題意識に対してはあくまでも傍観者でしかいられないのである。