ソフィスト

……nomosというギリシア語は、法であると同時に伝統や慣習を意味した。したがってその内容はポリスごとに異なり、普遍性をもたない。その相対性を自覚しやすいイオニア植民地においてこのnomosに対する普遍的な自然physisが問われたのであって、そこにはポリスの個性の発見が逆に抽象的思惟の成立を支えたと言える。12
……かつてのポリスの調和が失われ、混乱のうちに各人が有利な立場をめざして争う時代においては(=ペロポネソス戦争後)、知識はまさにこの個人にとっての実用をめざすものとして、教えられるものとなり、ソフィストsophistesがその教師として活動する。15
(自然哲学時代において)この新しい領域に鋭い感心を抱いたのはソフィストたちであり、彼らはnomosを批判するとともに、physisを人間個人に還元して、個人が他人の間で有利な立場を得るのに役立つような知識を教えた。19