カロリング朝のルネッサンスⅡ

カロリング期においては、文法がもっとも重んじられたことが重要である。これは唯名論VS実念論の対立などでも明らかなように、中世の知的環境において無視しえない文化的背景をもつ問題であった。すなわち、たしかに文法をめぐっては非常に瑣末な議論が横行し、これは後の教育論議において否定的なものと見なされるにいたるのだが、しかしそれは同時に、「それより以前の人心を支配していた完全な昏迷、混乱の証拠である神秘的な考え方や晦渋趣味に対する、良識、明晰への要求、したがって真の科学的精神の覚醒」としての意味をもっていたのである(126)。
この意味で、「中世の知的発展をその端緒からルネッサンスにいたるまで特徴づけるものは、論理的要求の顕著な優越性」なのであり、これはスコラ哲学の影響をうけたその後の教育制度を考えるうえで無視されてはならないポイントである(135)。「この論理的要求は九世紀直後にはまだ不確定」であったが、「一一世紀以降には…だんだんと発展していった」という(135)。カロリング朝時代は、瑣末な文法教育が否定視されることも多いものの、スコラ時代との接続においてきわめて重要な意味をもっているのである。