ジェスイットのコレージュ

ジェスイットたちは寄宿舎制度を嫌い、チューター制=指導教師制を好んだのだが、フランスは中央主権的な国民性のためか、比較的、寄宿生活が盛んになってしまったらしい。このことは、オックスフォードなどとは異なり、パリでコレージュが誕生したことの原因でもある。
さて、教育内容。
中世からの論理学・哲学は「高級コース」では教授されたらしいが、「普通コース」では文芸教育が主であり、これは人文主義者の教育思想とも同じ方向性であった。とりわけそこではラテン語が重視され、フランス語などはきわめて軽侮されていた。その理由は、(1)フランスの詩人は甘い恋愛を読むのでカトリックにそぐわない、(2)ルネッサンス期ではラテン語に基づく古典文芸が崇拝対象となっており、世俗への妥協を取るジェスイットはそれを取り込まざるをえなかった、ということだったらしい。
しかし特徴的だったのは、ジェスイットのコレージュで行われた教育実践が、修辞に重点のおかれた作文教育であり、作品の内的理解までは要求されなかったことである。普通、古典文芸が利用されるのは、過去の人間類型を把握し、人間理解を深める教育をおこなうためだと考えられる。しかし、そういうことは一切顧みられなかった。
その理由として述べられているのは、錯綜しているが、おそらく次の3つ。(1)古典文芸の内的読解は、人文主義者への利敵行為となってしまうことの怖れ、(2)歴史科学が未発達であったから、(3)現在よりも過去の方が、恣意的な造型が可能であったから。この3つがどう関連しているのかは、わかるようでわからず、ちょっと難しいところがある。