『さらば夏の光よ』

フィルムセンター。山根成之監督、1976年。原作:遠藤周作、脚本:ジェームズ三木。郷ひろみ秋吉久美子川口厚仲谷昇

二人の少年と一人の少女の愛の共同体が瓦解させられてゆく様を、叙情に満ちた演出と郷ひろみの名演で描いた青春映画の傑作。山根成之の評価を決定的にした。
秋吉久美子を観にいった。数年前、『八甲田山』を観たときに、青っぽい画面でよく顔が見えなかったから。

「男の友情と三角関係」という、ありがちすぎて逆に骨董的なんじゃないか、と思うようなストーリーだったが、すごく面白かった。わたし、日々単純になっていってるからね。何でも楽しめちゃう。でも、昭和50年の渋谷、原宿の風景、学生アパートや、その当時にだけ存在したのだろうロッテリアアウラなど、興味深いポイントがいくつもあった(秋吉がロッテリアのバイト店員なのだ)。
郷ひろみはたしかにカワイイ。あのまま大人になったのは問題なような気がするが、今のジャニタレと比較すると、どこか稚気があって、決して悪くない。小泉孝太郎とそっくりだと思ったが、それは小泉が時代遅れの雰囲気をどこかで隠し持っているからかもしれない。
秋吉久美子は、予想どおり素晴らしかった。すごく幼い顔だが、軽薄なところがあって、それが魅力になっている。あれは素だと感じさせる部分があり、もし演技だったらすごいが、たぶんあれは素なんだろうとやっぱり思う。今も軽薄っぽいから。でも、若いゆえの生硬さだけが生む軽薄さ、というのがたぶん確実に存在していて、その裏がわにある脆さみたいなのも伝わってきて、それがいいんだな、きっと。「旬」だったんだろう。