『犬儒派だもの』

私のファン(?)の方はご存知だと思うが、私が思想形成するうえで甚大な影響を受けた一人に、呉智英先生がいらっしゃる。久しぶりに本を買い、一気に読んだ。文章の上手さに改めて驚かされた。
読んでためになる部分ばかりだが、家族について語っている箇所をメモしておきたい。興味深いエピソードである。

今も言ったように、私は親にツメタイ。もともと性格的に家族の情というものが好きではない。私が一番好きなのは自分である。この世で一番大切な人、それは自分である。皮肉なことに、こうした私の性格は父からの遺伝らしい。父も私に似て、家族の情に薄く、自分が一番好きという性格なのである。これは、暴君タイプとは全然ちがう。暴君タイプの父親というものは、実は濃厚な家族の情を求めている。父はそうしたタイプとはちがって、きわめて理性的な自己愛主義者なのである。
しかし、その父が母の感化で性格にやや変化が出始めた。
母は父とは反対の性格で、非理性的で家族愛が強いタイプなのである。私は幼児の頃からこうした母にウンザリしてきた。私が女性嫌悪、大衆蔑視になったのは、母に長年ウンザリさせられてきたからである。今となっては、私はこの点で母に感謝しなければならない。母は身を以って、女は馬鹿だ、大衆は愚かだと、私に教えてくれたのだ。母がいなかったら、私の女性嫌悪思想・大衆蔑視思想も完成を見なかったであろう。……(188)

グローバル化によって、男は金髪女性のヌードに幻想を抱かなくなったのに、逆に女はますます西欧好きになっているとの指摘は、(女性嫌悪の面というのではなく)大変興味深く、重要な指摘である。また、今読んでいる本についての論及もあったのだが、それについては後日(明日?)書きたい。

犬儒派だもの (双葉文庫)

犬儒派だもの (双葉文庫)