『さくら隊散る』(1988)

パンフレットからの引用。

原爆で命を落とした移動演劇隊9人の隊員の足どりを、再現ドラマとゆかりの人々の証言からたどった記録映画で、新藤の被爆者に対する鎮魂の思いが再びこめられる。杉村春子宇野重吉など演劇界の巨星たちが隊長・丸山定夫を回想するシーンが印象的。

出演者、古田将士、未来貴子、川島聡互、八神康子、及川以造、竹井三恵、川道信介、水野なつみ、元松功子、北川真由美、内堀和晴ら。
ひさしぶりに原爆関係の映像を見て、衝撃を受けた。『男たちの大和』なんて、戦争を美化していて、イカンのではないかと思った(たしかに「美化」してしまったところが、切なく、可哀想なのだが、そこには決定的に、現実感覚が欠けている)。
とくに、『無法松の一生』に出ていた未亡人役の園井恵子さんが、さくら隊の一員として広島で被爆し、悲惨な最期を迎えたと知って、ひじょうにショックを感じた(『無法松』で子役だった長門裕之も、本作で園井さんの思い出を語っている)。
死は、人々の関係性のなかにおいて、はじめて意味を持つ。戦争によって多数の死がもたらされることの悲しさも、そうした関係性を念頭においてはじめて、実感されるものである。綿密なインタビューによって、原爆投下という出来事の悲惨さがこれ以上なく生々しく感じられた、圧倒的な作品だった。