『「近代日本文学」の誕生』

坪内祐三。ほぼ読了。
面白かった。『考える人』(新潮社)や『同時代も歴史である 一九七九年問題』(文春新書)も最近読んだが、一つの文章が長すぎて辻褄合わせに陥っているような章もあった。本書くらいに短いと、そのなかに必ずコンパクトな発見が盛り込まれているのでおもしろく読める。
それにしても、徳富蘆花とか内田魯庵とか二葉亭四迷とか、当時、なんであれほどトルストイに傾倒したのかが不明である。
また1905年(明治38年)、「倫敦塔」「吾輩は猫である」を皮切りに作家活動を開始した夏目漱石が、同時期の自然主義作家らとの関係で自らの文体をどのように構想していたのかにも疑問が残った。

この時機、日本の小説言語(文体)は、従来の尾崎紅葉的な美文がもう時代遅れのものになり、田山花袋島崎藤村らの自然主義文学が登場しようとしていたのだ。/つまり漱石は、同い年の紅葉や露伴ではなく、少し年下の花袋や藤村らと、作家的には同世代だったのである。(294)

うーん。    こ。
今日は小林信彦『夢の砦』(新潮文庫)を買った。上下巻で200円。

「近代日本文学」の誕生―百年前の文壇を読む (PHP新書)

「近代日本文学」の誕生―百年前の文壇を読む (PHP新書)