溝口健二『楊貴妃』(1955)

ほんとは『山椒大夫』を再鑑賞する予定だったのだが、頭がぼうっとして普段の5分の1くらいの回転速度しかなく、のろのろしていたために見られなかった。代わりにこれを見た。

(91分・35mm・カラー)溝口の初のカラー作品で、香港のショウ・ブラザーズとの合作だが、東洋的な美を演出すべく控えめな色彩に仕上げられた。楊貴妃(京)の生涯は玄宗皇帝(森)の回想という形式で語られ、皇帝の寵愛を受けながら親類の政治的野心の犠牲となった楊貴妃を悲劇のヒロインとして美しく描いたが、歴史劇というよりは心理劇の趣が強くなっている。
’55(大映東京=香港ショウ・ブラザーズ)(脚)陶秦、川口松太郎依田義賢、成澤昌茂(撮)杉山公平(美)水谷浩(音)早坂文雄(出)京マチ子森雅之山村聰進藤英太郎、小澤榮、杉村春子南田洋子、見明凡太朗、石黒達也、信欣三、

ごくごく平凡な出来だと感じた。退屈といっても良い。舞台設定、史実と不釣合いな心理劇など、いかにも中途半端。トークショーでも指摘されていたように、入江たか子が泣かされた挙句に降板し、杉村春子が代役に上がった作品である。京マチ子もかなり緊張していたのだそうだ。
帰宅後、ベートーベン弦楽四重奏曲を聴きながら、自棄になって酒を飲んでみる。