溝口健二『夜の女たち』(1948)

これも佳作。

(73分・35mm・白黒)敗戦直後の焼け跡に生きる3人の女の凄惨な生き様を描き、戦後溝口の本格的な復活を告げた傑作である。この時代はそうした女性たちを扱った小説の映画化がいくつかあったが、久板栄二郎の原作による本作は特にヒットしたという。イタリアのネオレアリズモ運動に触発された溝口は、大阪の荒廃した市街地でロケーション撮影を敢行し、暴力的な描写も辞さない冷徹な視線を貫いた。
’48(松竹京都)(原)久板栄二郎(脚)依田義賢(撮)杉山公平(美)水谷浩(音)大澤壽人(出)田中絹代、郄杉早苗、角田富江、永田光男、村田宏壽、浦辺粂子毛利菊枝、富本民平、大林梅子、青山宏、槇芙佐子

荒廃のなかにも復興の光が入り混じる大阪のロケ描写が見もの。西成で警察が売春婦を一斉検挙し、病院のようなところに収容される場面が出てきたのと、売春婦更正施設みたいな場所が出てきたのが、歴史描写として興味深かった。
姉妹ともに落ちぶれてしまうストーリーであるが、田中絹代が不良売春婦をやるのは、なかなかうまく演技しているとはいえ、ちょっとキャラクターに合わないように思える。
最後の瓦礫のなかでの決闘場面は、荒涼とした雰囲気が出ていてそれなりに見ごたえがあった。が、「運命」の音楽や、マリア様のステンドグラスなどは、ちょっとやりすぎか。