斎藤寅次郎『東京キッド』(1950)

美空ひばり花菱アチャコ榎本健一斎藤寅次郎監督作品。キッドも何人か来ており、榎本健一のタコ踊りに大受けしていた。微笑ましい。

(81分・35mm・白黒)13歳の美空ひばりがおきゃんな靴みがきの少女に扮し、生き別れの父娘の再会を描くが、結局は斎藤寅次郎流のドタバタ喜劇である。ひばりのためにギターを弾くのは彼女のスターへの道を準備した元“あきれたぼういず”の川田晴久で、他にも当時の人気コメディアンが多数出演した。「美空ひばり米国帰朝第一作」と銘打たれ、ますますひばり人気を沸騰させた記念碑的作品。
’50(松竹大船)(監)斎藤寅次郎(原)長瀬喜伴(脚)伏見晁(撮)長岡博之(美)浜田辰雄(音)万城目正(出)美空ひばり川田晴久堺駿二、高杉妙子、西條鮎子、花菱アチャコ榎本健一

古川ロッパが「鮮やか」で「気味わるし」と評したことを小林信彦氏も指摘しているが、たしかに左翼知識人から否定的に語られた不自然さを、10歳位の美空ひばりの演技に感じてしまう。歌はすごく上手いけど、将来どうなっちゃうんだろう?とでもいうような。
それでも、楽しい佳作。水吹きギャグ、新聞紙ギャグなど、単純素朴に面白い。三角関係に戻ったラストシーンの余韻がとくに素晴らしい。観客のみんながホッとしたはず。