『被差別部落の青春』

角岡伸彦、1999→2003、講談社文庫。好著。
2002年3月、同和対策事業の特別措置法が期限切れ失効したそうだが、同和対策などを通じて、もはや部落差別や部落意識が希薄化しつつあるなか、それでも残存する差別意識を背景に、自分のアイデンティティーとしての部落意識をどう了解するのか、たとえば部落出身であることの告白をどう意味づけるのか、といった問題がややこしくなっている。過剰に部落を意識するのも部落差別意識の裏返しであるのかもしれない。そういう息苦しい、鬱陶しい当事者意識が、よく伝わってきた。子育てに余裕がなく、金を安易にやったり早口でわけもわからず叱ったりする教育文化が、部落の子供たちの学力を低迷させてきた例が挙げられていたのは、印象的だった。

被差別部落の青春 (講談社文庫)

被差別部落の青春 (講談社文庫)