マキノ雅弘『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』(1954)

『石松開眼』。比類なき最高傑作。

公開:1954年 監督:マキノ雅弘
主演:森繁久弥、小堀明男、越路吹雪河津清三郎田崎潤、小泉博、志村喬田中春男
喧嘩一筋に生きて来た命知らずの石松が「笑っていても泣いているようなうるんだ瞳」をした夕顔という女郎に惚れて、俺は死ねねぇと考え始めた矢先、都田一家の闇討ちに遭う。森繁久弥の芸達者ぶりと底なしの魅力が華ひらいたシリーズ第八部。おいら死んだらなァ 死んだらなァ、道端埋めてくれ、蓮華 菜の花 嬉しやな 春にゃ咲くよ――大傑作!

私がいままで観た映画のなかでも最高位。森繁の凄さ、このような映像が撮られてしまったことの奇跡に、ただただ戦慄を覚える。じーんとして、ちょうどドンキホーテの前まで歩いてきたとき、眼が潤んでしまった。「…夕顔の笑っていても泣いているよな眼と石松の開眼と見つめ合う女と男の眼の映画でもある」(山田宏一)。
ぐだぐだ紹介することはしないが、これを観ないで人生が終わってしまっても良いのかと、大げさでなく思う。まだスクリーンで第一部から観られます。