内田吐夢『大菩薩峠』(1957)

中野翠『会いたかった人、曲者天国』(文春文庫)でも中里介山の事が取り上げられていたので、妙に期待を膨らませてフィルムセンターへ。

(119分・35mm・カラー)大河内傳次郎主演による日活作品(1935年)、片岡千恵蔵主演・渡辺邦男監督による東映作品(1953年)に続く、3度目の「大菩薩峠」の映画化は内田吐夢が担った。第1部では、妻を殺し、幻影に憑かれて次々と人を殺めてゆく主人公・机龍之助の無道ぶりが圧巻である。
’57(東映京都)(撮)三木滋人(監)内田吐夢(原)中里介山(脚)猪俣勝人、柴英三郎(美)鈴木孝俊(音)深井史郎(出)片岡千恵藏、中村錦之助月形龍之介、波島進、千田是也大河内傳次郎長谷川裕見子浦里はるみ丘さとみ、日高澄子、山形勲、岸井明、永田靖、清川荘司

期待しまくったのには実は、内田吐夢宮本武蔵』が私の原点の映画であることもあった。実際、殺陣の場面の緊張感の演出は素晴らしく、簾を斬りつけ、曇天の不気味な闇の中に浮かぶ過去の亡霊をも次々と斬りつける机龍之助には、ひゃぁ〜かっこいい、としびれてしまう。片岡千恵蔵の悪の権化ぶりが凄い。
ただ、ストーリーはほとんど支離滅裂。原作を反映しているのだろう、多分。原作の最後では、駒井能登守という人が、南の島で農本主義的なユートピア建設に乗り出すらしい。
明日の2部、3部もたぶん観にいくことになるとは思うけど(3部は観れないかも)、次郎長シリーズを見れないのがとても残念。