内田吐夢『大菩薩峠 完結篇』(1959)

大傑作。必見!

(105分・35mm・カラー)旗本に飼われて夜の街の辻斬りとなった龍之助が、兄の仇を討とうとする兵馬(錦之助)と最後の対決に臨む第3部。構図の工夫やモンタージュのキレの良さよりも、ショットごとの濃密な空気作りに賭けた内田の演出意図を、撮影陣が真正面から受け止めている。
’59(東映京都)(撮)三木滋人(監)内田吐夢(原)中里介山(脚)猪俣勝人、柴英三郎(美)鈴木孝俊(音)深井史郎(出)片岡千恵藏、中村錦之助東千代之介月形龍之介長谷川裕見子丘さとみ、星美智子、喜多川千鶴、山形勲河野秋武沢村貞子浦里はるみ

夜霧に紛れて辻斬りに励む龍之助。駒井能登守の殺害を企む旗本に見込まれ、朽ち果てた離れ屋敷で顔に痣のある女と暮らしている。一方、復讐に燃える中村錦之助は、旗本に謀られ、牢に投げ込まれる。その後、中村は月形龍之介に救出され、能登守の前に現れた龍之助と剣を交える。
しかし旗本の制止で仇討ちは果たされず、龍之助は女と故郷へ向かう。殺した前妻のお浜の亡霊に苦しむ龍之助は、魔道を徹底せんがためのみに、うら若き女を惨殺して恥じない。他方、中村錦之助の兵馬は、龍之助とお浜の子を胸に抱き、魔道に苛まれる龍之助の業苦に思いを致す。
最後は映像の様式美といい、龍之助の幻覚の恐るべきイメージといい、素晴らしいというほかない。3部とも観る価値は十分ある。