黒沢清『回路』(2001)

新文芸座、5本目。私はイマイチだった。

(2001) 製作総指揮 徳間康快 製作 山本洋 / 萩原敏雄 / 小野清司 / 高野力 監督 黒沢清 脚本 黒沢清 撮影 林淳一郎 美術 丸尾知行 音楽 羽毛田丈史
出演 麻生久美子 / 加藤晴彦 / 小雪 / 有坂来瞳 / 松尾政寿 / 武田真治 / 風吹ジュン / 菅田俊 / 哀川翔 / 役所広司

イマイチというのはストーリー的にそうなだけで、ホラー映画としての怖さには飛び切りのものがあったので、それだけで十分評価してもよい。とくにソファーの下の隙間から覗いても幽霊はいないのに、見上げたら怖い顔の女の人の手が見えるというシーン、画面がごく一部を除いて真っ暗になり映画館全体の暗闇を感じずにはいられなくなるシーンなどは背筋がゾクリとした。「古典的なお化けが出るぞ〜」という感じの音も素敵。恐怖感倍増。
ストーリー的に納得できないのは、「死んだ人の孤独を見てしまうと生きている気力がなくなって死んでしまう」「生きるも地獄死ぬのも地獄」という前提がある特定の人生観を当てにするものであり、私みたいな人間にとっては、ちゃんちゃらおかしく感じられることによる。私に現代人特有の感覚が欠けているだけなのかもしれないが、生きることが孤独な営みであることは当然として、孤独が怖いとか、孤独を彷徨うみたいな感覚が共感できない。「ただ世界観が脆弱なだけなんじゃないの?」と思ってしまう。第一、ほんとうに世界に自分一人だけという状況になったら、自己意識そのものがだんだん無くなっていくはずではないか。『大菩薩峠』の机龍之介の壊れた自己葛藤から学んで欲しい。
大学院生・武田真治の怪演が笑える。あと馬鹿な若者役の加藤晴彦がなかなか良かった。あと麻生久美子という女優は知らなかったが大変かわいらしい人で、ただ小雪にしろ有坂来瞳にしろ「そうは見えないのに意外におっぱいがデカイ」という、まあこれは括弧で強調する必要もないけれど、そういう女優が多く黒沢清作品に出てくるように感じられるのは、これはたんに自分の萌えポイントを投影した卑しい邪推にすぎないのか、と感じた。