千葉泰樹『煉瓦女工』(1940)

まずまずの佳作。

(63分・35mm・白黒)横浜・鶴見の運河沿いの長屋に暮らす貧しい人々の生活を、少女(矢口)の視線で捉えた千葉泰樹の作品。戦争直前の時勢にあって、日本人と朝鮮人一家との暖かい交流を描いたことも珍しい。検閲によって上映を阻まれ、戦後の1946年になって公開された。
’40(南旺映画)(撮)中井朝一(監)千葉泰樹(原)野澤富美子(脚)八田尚之(美)小池一美(音)深井史朗(出)矢口陽子、三島雅夫、三好久子、小高たかし、徳川夢聲、水町庸子、悦ちゃん、小沢榮、赤木蘭子、小高まさる、宇野重吉滝沢修

川べりの貧しい長屋生活を丁寧に描いている。子供を負ぶさった、腕の良い大工の娘が主人公。この娘が学校に入学してきた朝鮮人の娘と友達になり、鶏や山羊のいる朝鮮人一家の住まいを訪れ、交流する。日本人長屋でも夜逃げや働き盛りのお母さんの死など悲惨なことがたくさんあるが、もっと貧しいと思われた朝鮮人長屋に、あくまでも楽天的な幸福感が息づいている。
朝鮮の民族音楽が鳴ってささやかなハッピーエンドを迎えるのが印象的。しかし浪曲一家の描写が多すぎるのはバランスを失していた。