渋谷実『自由学校』(1951)

公開:1951年 監督:渋谷実
主演:佐分利信高峰三枝子淡島千景佐田啓二、田村秋子、杉村春子笠智衆
「自由がほしい」とつぶやく、エリートサラリーマン・五百助。会社を辞めたあげく、妻・駒子にも家から叩き出されるも、本当の自由を求めて放浪しはじめる。妻も夫の不在に喜び、羽をのばそうとするが…。戦後初の競作映画であり、大阪版では監督に吉村公三郎、夫婦役に小暮実千代、小野文春がむかえられた。駒子に言い寄る復員兵・笠智衆のコミカルな演技もみもの。

題名があまり良くないと思うが、映画自体は面白かった。御茶の水駅あたりに五百助が住んでいた浮浪者宿があり、中央線の様子や、御茶の水駅から水道橋に下りる坂が写されていて(浮浪者の恰好をして佐分利信がポイ捨て煙草を拾う)、大変興味深かった。
ぴちぴち娘役の淡島千景、オカマっぽい許婚役の佐田啓二、憎らしい杉村春子、シベリア帰りの笠智衆など、多彩なキャラクターが楽しく描かれていて良かった。佐分利信高峰三枝子の演技はとりわけ素晴らしく、高峰三枝子の「私たちは封建的にも戦後派にもなれない中途半端な世代なのね」という言葉が興味深く感じられた。しかし佐分利信のぐうたら振りをあのまま許しておいて構わないものだろうか?