ジョセフ・マンキウィッツ『三人の妻への手紙』(1949)

公開:1949年 監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
主演:ジーン・クレインリンダ・ダーネル、アン・サザーン、カーク・ダグラス、ポール・ダグラス、ジェフリー・リン、セルマ・リッター
「あなたの夫と駆け落ちする」。こんな手紙が町一番の美女から三人の妻の元に届いた。妻たちはもしや自分の夫が…と危機感を抱きながら、これまでの夫婦生活を追想する。夫より稼ぎが多く立場が逆転している妻…金目当てで結婚したものの満たされない生活を送る妻…。回想シーンと現実がテンポよく交錯し、マンキウィッツならではのウィットとアイロニーに満ちた、魅惑のコメディ!

シネマヴェーラ。『外国映画ぼくの500本』より。

三つの過程の三組の夫婦がいる。妻たちのある者は劣等感が強く、ある者は社長婦人である。彼女らはアディという謎の女から、駆け落ち宣言の手紙をもらう。三人ともその相手は自分の夫かもしれないと危惧を抱く。そして彼女らの過去が次第に明らかになっていく。経済的に安定し、自信ありげな一人が、実は最も危ない立場にいることも暴露されていく。まったく、この脚本には感心すべき点が多い。演出もニュアンスに富んでおり、ラストのさばきかたなど余韻があってうまい。やわらかく落ち着いたタッチで自然な苦笑をかもし出している。(115)

なんと☆4つ。アメリカ版成瀬巳喜男といったところか。たしかに線路脇でゆれる家とか女性の恋の駆け引きとかは面白いし、回想シーンのはさみ方なんかもけっこう上手く作っている。でも、女3人のキャラクターの描き分けがもっとリアルでも良かったんじゃないかという気がする。劣等感の強い女の人のキャラクターがとくに平板だった。
1949年段階のアメリカで高校教師という職業は誰もが認める薄給だったことがわかった。人類の知的遺産を教える、などと熱いことを語っていて、そんなものだったんだなと思った。