今村昌平『にあんちゃん』(1959)

ひさびさのフィルムセンター。しみじみとした感動作。

(101分・35mm・白黒) 不景気な炭坑町で働き、極貧生活を強いられる在日コリアンたちに目を向けた作品。生活苦を正面から受け止めて乗り越えようとする“にあんちゃん”(二番目の兄)の精神的な逞しさは、この後の今村作品のキャラクターに通ずる力強さを感じさせる。俯瞰ショットが捉える長崎の島の炭坑は壮観である。
’59(日活)(原)安本末子(脚)池田一朗今村昌平(撮)姫田真左久(美)中村公彦(音)黛敏郎(出)長門裕之吉行和子二谷英明、沖村武、前田暁子、松尾嘉代北林谷栄芦田伸介西村晃小沢昭一殿山泰司、山内明、大森義夫高木均賀原夏子山岡久乃穂積隆信、浜村純、垂水倍郎、松本染升、福原秀雄、加原武門、牧よし子、辻伊万里高原駿雄

ジョン・フォードわが谷は緑なりき』と同じ炭鉱モノ*1。でも日本映画は皮膚感覚で自然に没入できる。双葉先生も「人情にほだされやすいんでね」としつつ、「帰ってきた次男を末の妹が迎える終章などじいんときた」と書いている(158)。橋本文雄による季節感を感じる音の使い方も良い。
都会人役の吉行和子浪曲を披露する朝鮮人役の小沢昭一、人情に厚い労務者の殿山泰司朝鮮人のお婆さん、皆素晴らしかった。そして何よりも「にあんちゃん」役の男の子。長門裕之を完全に食った演技を見せていた(東京まで行ってしまう、というエピソードも良かったし)。日本映画、やっぱり良いわ。ほんと大好きです。

*1:ところで「朝鮮戦争神武景気」の狭間の昭和28・29年頃に、炭鉱が人員整理を余儀なくされるほど不況に陥ってたというのは知らなかった。どうしてなんだろう?あと、海の近くだと魚を捕れば飢えることはないように思ったが、そういうものでもないのかな?